【挑戦】『クビキリサイクル』(西尾維新著/2002)と消しゴムの天才を目指す僕。

こんばんは、倉敷です。

 

先日『クビキリサイクル』(西尾維新著/2002)という本を読みました。

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戯言シリーズ"というノベルシリーズの第1作目であり、

そして今をときめく作家、西尾維新さんのデビュー作でもあります。

 

ジャンルはミステリ。

 

僕は西尾維新さんの小説をあまり読んだことがなくてですね……

 

化物語』や『刀語』や『めだかボックス』の印象から

 

この『クビキリサイクル』も

 

厨二系バトルものなのかな~」

 

とわくわくしながら読み始めたのですが、

 

全然違いました

 

厨二感はあります。ごりごりです。

バトルもあります。ちょろっと。

 

ただ、メインはミステリ

 

それもかなり王道(本格?)の。

 

物語の舞台は”鴉の濡れ羽島”と呼ばれる、絶海の孤島。

 

その島に棲まうのは勘当されてしまった財閥のご令嬢様で、

彼女は自身の退屈を紛らわすため、世の中の天才たちを島に招いています。

 

≪天才≫画家

≪天才≫料理人

≪天才≫学者

≪天才≫占術師

≪天才≫技術屋

 

主人公の”ぼく”は、≪天才≫のうちの1人である友人”玖渚友”の付き添いとして島を訪れ、ご令嬢様"赤神イリア"の館で日々を過ごします。

ちなみにこの館、宿泊も食事も全部ただ。

主人の趣味酔狂で客人を招いているだけなので、全て無料です。

羨ましいですね。

しかも登場人物美少女ばかり。男キャラは"ぼく"を含めて2人しかいません。

孤島の館で美少女に囲まれれば、僕ならばどうにかなってしまいそうです。

 

≪天才≫画家のモデルになったり、≪天才≫占術師にからかわれたり。≪天才≫料理人の料理を食べたり、≪天才≫技術屋の世話をしたり。

そんなある日。

館の一室で、を斬り落とされた、”殺されたことに疑いの余地がない”死体が見つかります。しかも状況は、ペンキの川に囲まれた密室で………

 

という。

 

孤島! 密室! 首なし死体!

 

という。

 

ハンバーガー! 寿司! ラーメン!

 

みたいな。

 

おらぁ! そそるだろ! 興奮するだろ!

 

んああんああん!

 

みたいな。

 

シチュエーションだけで魂が濡れてくるような小説です。

 

詳しいネタバレは省きますが、事件が解決したあとのどんでん返しもまた見事。

 

っくぅ〜〜〜気持ちいぃいっ!!!

 

って感じ。

 

そしてまた何よりキャラクターがいい。

元々≪萌え≫と≪ミステリ≫の融合をテーマに書かれた作品らしく、

キャラクターがみんな独特で可愛い。

肩書きが天才っつーやつらばっかだから一癖も二癖もある。

しかも全員美少女

 

たまんねえな

 

そんな天才ズの中でも特に僕が心を奪われたのが、メインヒロイン”玖渚友"

主人公”ぼく”の友人で、

青髪碧眼の美少女で、

19歳のサヴァン症候群で、

返事が「うにー」だったり、

一人称が『僕様ちゃん』だったり。

 

かわいいったらありゃしない。

何ですか『僕様ちゃん』って。

そんな一人称の美少女にあった暁には、着ている服を全部脱ぎ捨てて、

絶海を無理矢理埋めて孤島を本州に繋げてしまうかも知れません。

 

こういうキャラクター造形は西尾維新節炸裂ッって思いながら読んでました。

 

 

皆さん、ぜひ読んでみてはいかがでしょう。

 

 

 

さて。

 

 

この作品のキーワードの1つが、

 

”天才”

 

天才、いいですよね。

 

憧れます、天才。

 

僕は小学生の頃、受験もしないのに進学塾に通っていました。

その時に受けたとあるテストで、

 

400点満点中90

偏差値23

 

という唯一無二の奇跡を起こした思い出があります。

 

天才とは無縁の人間です。

 

その脳味噌の機能停止ぶりには、さすがの僕も、危機感を覚えました。

親の怒鳴り声が途中から奇妙な笑い声に変わったのを克明に記憶しています。

よく今まで大きな事件に巻き込まれずに生きてこれたな、と我ながら感心します。

 

けれども。

 

たとえ天才とは無縁であろうとも、天才になりたいとは思います。

 

天才になればお金が手に入り、女の子に言い寄られ、港区のタワーマンションに住み、高級車を乗り回し、天候を支配し時空を自在に行き来することが出来ます。

 

天才になるにはどうしたらいいでしょう。

 

クビキリサイクル』の中にこんなセリフがありました。

 

「──天才をどう定義した? ≪遠い人≫だってな。イリアから聞いた。だけどそりゃ間違いだ。ベクトルなんだよ。要するにな……。人生における時間を、一つの方向に向けて全部発揮出来る人間。人間にはいろんなことができる。だけどいろんなことをやらずに、たった一つだけにそれが集中したとき、それはとんでもねえ力を発揮出来る。それこそ、遠くの人だと思えるくらいにな」

 

つまり。

 

一点に熱意を集中させたら人は天才になれる

 

のだそうです。

 

ほう。

 

やってやろうじゃねえか。

 

 

…………………………

……………………

……………

………

 

消しゴムを用意しました。

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僕は今日をもって消しゴムの天才です。

 

消しゴムの天才とは何か。

 

その全てを語るには紙幅、もといデータ容量が足りませんので割愛します。

山より深く、海より高く、町内会のように果てしない、崇高な天才であることは間違いないでしょう。

 

端的に言えば、消しゴムの天才とは最速で消しゴムを使い切る者に与えられる称号です。

 

僕はこれから圧倒的勝つ絶対的な早さで消しゴムまるまる1つを使い切ります。

 

一点(消しゴム)に熱意を集中させたとき、人は天才になれる。

 

その言葉を信じて。

 

 

 

おや? この消しゴム……

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あっ!

 

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び、美少女が隠れている!!!!!!

 

 

あれ……もしかしてこれ………

 

 

ちらっ

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あんっ

 

 

これ以上はいけません。

 

 

ただ、ここで気がついたのですが、

 

この消しゴムを使い切るということは、同時にこの巨乳の美少女も消してしまうということになります。

 

それは困ります。嫌です。辛すぎます。

 

ですので、消しゴムをもう1つ用意し、こちらには僕がこの世で最も忌避する食べ物の名前を書きました。

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タガメ、です。

 

 

タガメ(田鼈、水爬虫)は、カメムシ目コオイムシ科に分類される昆虫の一種。日本最大の水生昆虫で、日本最大のカメムシ半翅目)。

    (出典元:wikipedeia)

 

かつて学生だった頃の話。

 

僕の所属していたサークルは、平常時から脳味噌をアルコールに漬け込んでいる輩が多数在籍しておりまして。

 

それはもうトチ狂ったサークルでした。

 

そんなサークルの飲み会で、狂人の1人が酒のつまみにタガメを用意していました。

 

狂人 「うまいよ。食べてみ」

 

1ミリも開封していないタガメのパッケージを僕に差し出しながら、彼は言いました。

白いパックに整然と収まったタガメたちは、バイオ系ホラー映画などに登場するやばい研究室を思い出させました。

 

ただ、僕はその時酷く酔っていたので、迷うことなくタガメを口にしました

1デシリットルくらいは「うまいかもしれない」と思ったからです。

 

口に入れた瞬間吐きました。

 

硬いんだか柔らかいんだか分からない虫の食感に、唾液がどぅわっと湧きました。

唾液というよりは最早腐った泥水に近い何かでした。

 

味なんて覚えていません。

その時辛うじて頭に浮かんだ単語は『最低』でした。

およそ食べ物に対する表現ではありません。

 

しかもそのタガメ加熱用食材だったらしく。

それを知らずに僕はで食べました。

生食が『最低』さに拍車をかけていたのかも知れません。

 

以来僕はタガメが食べられません。

飲み会でタガメがでても食べないようにしています。

タガメが大嫌いです

なのでたくさんタガメを書きました。

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呪詛のように。

この世のタガメを全て滅ぼそうという黒い意志をペン先に宿らせて。

 

 

 

では、いよいよ消しゴムの天才になろうと思います。

 

ぐっ………

 

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ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ………

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ひたすら消しゴムを擦ります。

無心です。何も考えません。

この行為の非生産性を考えたら終わりです。

凄惨なことになります。

 

僕は天才になる僕は天才になる僕は天才になる僕は天才になる僕は天才になる──

 

と。それだけを脳内に叫び続けます。

 

天才に憧れた幼少期

バカとなじられた小学時代

キミの学力では行ける高校がないと言われた中学時代

 

バカとは僕の代名詞

アホとは僕の生き様

天才は銀河より遠い場所で燦然と輝くだけのもの。

憧れすら抱くことも許されない未知のもの。

 

そう思っていた時期がありました。

しかし今日、僕は、天才になるのです。

全身全霊を賭して消しゴムを擦り、生まれ消しカスの中から、『天才』を取り出す。

そう。僕は人生23年目にしてようやく………

 

「あれ?」

 

ここでふと気がつきました。

 

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もしかして

 

くるっ……

 

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あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!!!!!!

 

美少女の消しゴムを擦っていました。

 

実は最初に美少女消しゴムの裏に『たがめ』と書き殴り、その後、気がついてもう1個の方に書き直したのですが、最初の方をひたすら擦っていたようです。

 

本当の虚無が訪れました。

もうどうでもよくなりました。

髪の毛の部分が削れ、美少女が禿げました

しかし取り返しは付きません。

このまま擦り続けるしかありません。

辛くても苦しくても、やり続けるしかありません。

 

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うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

 

愛しさ切なさ虚しさも。全てを殺す勢いで、一心不乱に擦り続けました。

 

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するとふと、美少女が言うのです

 

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美少女「倉敷くん……私、充分、幸せだったよ?

 

っぐふううううううううううううううううううううううああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ

 

 

 

ああ………

 

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あぁ……

 

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あぁっ………………

 

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ううっ……………

 

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美少女は消しカスになり、絶えました

 

最速で消しゴムを使うとか、天才になるとか、もうそんなことはどうでもいいです。

 

天才になるには、

一点に熱意を集中させるということは、

大いなる犠牲と表裏一体なのだと学びました。

 

天才になるために僕は彼女を失った。

 

それならば僕は天才じゃなくてもいい。

一生バカでいい。

 

もう帰ってこない彼女を見つめながらそう思いました。

 

天才とは、ただ憧れるだけの存在ではないのです。

 

Fin

 

 

 

追記

 

消しカスがとてもおいしそうに見えたので、家にあった少しオシャレ目なお皿に盛りつけてみました。(添えてあるのは枯れた唐辛子です)

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結構フォトジェニックな1品になりました。

 

では。